このブログで紹介している登山ルートの状況は、現在の当該ルートの状況を保証するものではありません。
山行に先立っては、必ずご自身での情報収集を怠らず、安全な計画を心がけてください。

2013年1月8日火曜日

山行記 : 2013年1月2日~4日 燕岳 [2日目 その2] 燕山荘にて



(この記事は「[2日目 中房温泉~燕山荘]」編の続きです。)


燕山荘に入ると、受付をするでもなく、アイゼンを外すでもなく、ザックを下ろすでもなく、ただ椅子に座り込んでしまった。
一気に力が抜けてしまったのだ。
できればこのままボーーーッとしていたい。

が、当然そんなわけにもいかないので、とりあえずザックを下ろし、雪を払い、アイゼンを外し、受付で手続きをした。

僕が雪を払ったり、アイゼンを外している時に、まさに僕の目と鼻の先の受付では、小屋番の兄ちゃんに一人の登山者が何かを訴えていた。
その人の姿は、まさに今着いたばかりで、装備も全く解いていない。
聞き耳を立てていたわけではないが、脱力した僕の耳に入ってくるその登山者の訴えは、ただならぬ内容だった。

曰く、大天井の手前の稜線上で連れの女性が低体温症で動けなくなり、救助を求めて自分がここまで来たのだ、と。

疲れ果てていた僕は、事の重大さが理解できず、
「そりゃ、こんな荒天で表銀座歩いたら、遭難もするわなー。。。」
と、ボンヤリと考えるに留まったが、受付で熱いお茶をいただいて人心地つくにつれ、状況が飲み込めてきた。

おいおい、あんなところで停滞って、大丈夫か?!
いや、大丈夫じゃないじゃん!

僕にとって、初めて身近で起こった遭難事故だ。
だからといって、僕にできることは何も無い。
こんなことを言ってはナニだが、僕では、救助に向かってもあんな稜線を歩いたら、500mも行かないうちに自分が遭難してしまう。


その後、小屋のスタッフの案内で、自分の寝床に荷物を下ろす。
どうやら今日の客の入りでは、本館だけで事足りる上に、カイコ棚のような寝床の4畳スペースに2~3人という、ゆとりある割り振りのようである。

荷物を置き、着替えをして、談話室(?)に移動。

夏場に食堂として使っているスペースを半分に割って、南側はそのまま食堂、北側には4脚のコタツを置いて憩いの場として解放されているのだ。いうなれば、談話室みたいなものだ。
コタツにはなんとミカンまで用意されており、自由に食べて良いという。まさに楽園!

また、そこには大画面テレビも置かれていて、僕が部屋に入ったタイミングでは、箱根駅伝の日体大のアンカーが1位でゴールする寸前だった。
まさか日体大が優勝とは。全くノーマークだった。
何から何まで至れり尽せりで、とろけそうになる。

夕飯は17:30ということで、それまではこの部屋で、テレビを見たり、本を読んだり、同宿の人と雑談したり、うたた寝したりと、のんびりと過ごしていた。


が、すぐそばで、救助を求めて燕山荘にたどり着いた遭難パーティのメンバーが、安曇野署と遭難状況について電話で話をしている。
聞き耳を立てているわけではないのだが、至近距離すぎて全部丸聞こえで、良心の呵責を覚える。
どうやら相当マズイ状況のようだ。
自分には何をしてやることも出来ない、それが歯がゆい。島崎三歩のようなスーパーマンだったらすぐにでも助けに行けるのに。
スーパーマンどころか、登山者としては並以下である自分が呪わしいばかりだ。


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ここで、燕山荘の年末年始営業の様子を紹介したい。

まず、1月3日時点での燕山荘で最も目を引くのは、談話室の手前に張り出されている、宿泊客の書き初めだ。

この書き初めは、いつでも誰でも、好き勝手なことを書けば良い。
この張り出された書き初めの下に、書き初めを行う台が置かれているので、気が向いたらそこで書けば良いのだ。

なお、餅つきは1月2日までだったようで、僕は参加できなかった。残念。

トイレは夏場と同様に使用できるが、水道は全く利用できず。手を水で洗う代わりに、アルコール消毒液が置かれている。
また、500ml目安で200円でお湯を分けて貰えるので、テルモスを持参している場合にはぜひ利用したいところだ。

昼食も、14時までは絶品なカレー各種やその他の軽食なども適価で提供してくれるので、何泊も停滞するようなことになっても安心だ。


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17:30、夕食の時間。

相変わらず美味しいし、洋ナシのコンポートも疲れた体に嬉しい限りだ。

夕飯後は、消灯時刻である21時まで、持参した本を読み耽る。
今回の本は、塩野七生『ローマ人の物語』の文庫版24、25、26巻の3冊だ。正月休みのうちに、そこまでは読み切りたい。

25巻を読み終わったところで、この日は就寝。
明日はいよいよ下山だ。


(「[3日目] 燕岳山頂を見ずして下山」編つづく)




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